睡眠障害|おひさま 子ども・ファミリークリニック|神戸市中央区の小児科・児童精神科・発熱外来

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睡眠障害

睡眠障害|おひさま 子ども・ファミリークリニック|神戸市中央区の小児科・児童精神科・発熱外来

睡眠障害について

睡眠障害でよくみられる症状

  • 寝付けない
  • 途中でよく目が覚める
  • 朝早く目が覚める
  • 日中の眠気が酷い
  • 朝起きられない
  • いびきがひどい
  • 疲れが取れない
  • 横になると痛みやむずむずした違和感がある
  • 金縛りがある
  • 睡眠中パニックをおこす
  • 夜間の歯ぎしり

睡眠の問題はなかなか理解してもらい辛く、我慢して過ごしてしまいがちな症状です。
しかし、睡眠の問題で年間5兆円の経済損失があるとも言われています。
さらに、睡眠の問題は本人だけでなく家族への負担を生むこともしばしばあり、家族全体の健康問題として捉えることが必要です。
上記の様な症状がある場合、お気軽にご相談ください。

以下に、当クリニックで主に治療対象としている睡眠障害について解説します。

小児期にみられる睡眠障害(総論)

睡眠障害

学童期前後に見られる睡眠障害には、不眠(入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒などの総称)、過眠(おおむね起床困難として観察される)、夜驚症、夢中遊行などがあります。不眠の背景は、発達障害、いじめなどを含むPTSD、愛着障害などのほかにもぜんそくやアトピー性皮膚炎、むずむず脚症候群などの身体疾患、塾やスポーツでのオーバーワークなど多岐にわたります。

過眠には、ナルコレプシーといった睡眠システムの異常として生じるもののほか、塾やスポーツでのオーバーワークに続発して生じる睡眠不足症候群に続発して生じるもの、原因不明の周期性過眠症などがみられる場合もあります。
夜驚症は主に就学前後の時期に深い睡眠のタイミングでみられることが多く、恐怖体験をしたかのような叫び声と心拍上昇などの生理的変化を来します。
夢中遊行は同じく深い睡眠の時に生じることが多い現象ですが、一見すると目が覚めているかのような複雑な行動を見せるものの、周囲の呼びかけに応答がなく、起床後もそのときの記憶がない状態です。

夜驚症、あるいは夢中遊行を疑わせる状態には、てんかんの複雑部分発作が隠れている場合もあるので注意が必要です。

A:不眠症

A-1:自閉症スペクトラム障害に伴う不眠症

自閉症スペクトラム障害に睡眠障害が高率に合併することは広く知られています。調査対象の集団によって結果はばらつきますが、多くの報告をみますと70~90%の自閉スペクトラム症をもつお子様に入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒、その結果総睡眠時間の短縮がみられることが言われています。これらの睡眠異常は特に幼少期に強く、年齢を重ねるごとに自然に目立たなくなる例が多く見られます。中学生程度になると、睡眠問題が強く残存している方が珍しくなるほどです。私がこれまで診療した経験でも、自閉症スペクトラム障害に伴う睡眠障害で受診される方は1才弱から小学生低学年頃に初診となることがほとんどです。

自閉症スペクトラム障害に伴う中途覚醒によって困りごとが生じるのは,多くの場合家族です。大半は中途覚醒の度ごとに不機嫌となり、ご両親ともに眠れず疲弊していくことがしばしばみられます。機嫌良く起きていたとしても、遊び回ることで家族の睡眠を邪魔することが多いようです。

それでは彼らは睡眠時間が短くても平気なのでしょうか?臨床経験から考えるとそうとは思えません。やはり総睡眠時間が短いことでイライラし易くなることもしばしばですし、周囲からの情報の受け止めも悪くなり、折角の療育の効果が半減しているのではないかと思われることがあるのも事実です。実際、メラトニンや抗ヒスタミン剤で入眠と中途覚醒が改善する、あるいは不安・緊張が強いお子様の場合はリスペリドンやアリピプラゾールを用いることで睡眠状態が改善したとたんに、日中、穏やかに過ごすことが出来るようになる、言葉が増える、目線が合うようになる、大人の指示が入りやすくなる、などを経験することはしばしばです。

そして、重要なことはお子様の睡眠状態が良くなり、日中の状況が好転することで家族の疲労状態が改善し、日中関わる学校の先生、療育に携わっていただくコメディカルスタッフとの関係も改善することです。その結果、本人にとってより望ましい経験や学習ができるようになっていると考えます。

これらのことを考えると、この場合、自分の状況を周囲にうまく伝えられない本人の苛立ちが最も強い困りごとなのかもしれませんが、根気強く付き合うべき周囲の大人の気持ちが持たないという困り事も同様に重要な問題であり,その点が改善するような介入は大変効果的であるといえるでしょう。

A-2:睡眠異常を主徴の一つとして持つ症候群に伴う中途覚醒

アンジェルマン症候群、スミス・マジェニス症候群、CFC症候群その他自閉症スペクトラム障害との鑑別が難しい発達遅滞を生じる様々な症候群で自閉症スペクトラム障害と同様な睡眠異常を認めることはしばしばあります。対処・誰がどのように困るのかなどは、自閉症スペクトラム障害に準じます。異なることとしては、成長によって睡眠異常が軽減することが少ないということです。
これらの症候群に伴う睡眠異常としての中途覚醒については、メラトニンなどの長期服用が必要となることが多く経験されます。

A-3:その他疾患に伴う中途覚醒

これまでに触れてきた発達遅滞を来すもの以外にも、中途覚醒を来す疾患はたくさんあります。小児でも睡眠時無呼吸症候群はみられますし、その多くが診断されていないという状況があります。小児の睡眠時無呼吸症候群の場合、成人のように明確に呼吸を停止したり、いびきをかいたりするのではなく、低呼吸状態程度によって低酸素血症状態になることで睡眠の分断が生じるため、日中の過剰な眠気とそれに伴うイライラのしやすさ、注意欠陥多動性障害のような多動性や不注意を呈することがありますので、判断には注意が必要です。

また、多くみられるものとしてはアレルギー疾患があげられます。特にアトピー性皮膚炎に伴う夜間のかゆみ、アレルギー性鼻炎に伴う睡眠時無呼吸様低酸素状態は睡眠の分断につながり、やはり日中のねむけ、多動性や不注意を招くことがあります。

さらに、見逃されていることが多いものとしてはむずむず脚症候群に伴う睡眠分断のため生じている問題です。病名が「むずむず」とついているため、聞き逃すことも多いのですが、脚が焼けるような感じ、成長痛と区別が付かない場合もあります。また、幼児の場合はうまく言語化できず、家族からすると疳の虫のようにみえるため放置されることもしばしばです。むずむず脚症候群は血縁者に同じ症状を持つ人が高頻度で確認されますから、家族に思い当たる症状を持っていないか確認することは重要なポイントとなります。

そのほかにも多くの疾患で生じうるのですが、共通することは睡眠の分断が生じうることです。このような特定の疾患に伴う睡眠異常は、原因となる疾患を十分改善することで症状が改善することに繋がりますので、それぞれの疾患の主治医との連携が鍵となります。

A-4:睡眠不足による睡眠覚醒異常に伴う中途覚醒

かつては、塾やクラブ活動でより良い成績を上げるために睡眠時間を削った生活を続けた上に、なんらからの強いストレッサーにさらされたことをきっかけに二次性概日リズム睡眠障害を来し、その一症状として、中途覚醒がみられました。この場合、睡眠不足が背景にあるわけですから、十分な休養をとることで、自然に寛解する場合もあります。
しかし、元来、無理を押し通す気質があるからこのような病態に陥るわけですが、その背景としてアスペルガー症候群のような一見、言語能力に問題のない自閉症スペクトラム障害がある場合や、家庭環境が複雑で愛着障害がある場合も少なくありません。これらの背景を持つ場合、自然寛解は期待できないため、自分の特性に対する気づきや、環境調整に関われる立場の人がいれば介入を試みることが必要な場合もあります。

A-5: IT機器等の暴露による中途覚醒

このような背景をもつ中途覚醒は、この数年で急激に増えている実感があります。以前から、ゲームやテレビなどのメディアに没入することで睡眠不足となり前節のような状態に陥る患児は一定割合でいたのですが、近年の急激なスマートフォンの普及や、携帯通信網との接続機能はなくても自宅ではWiFiでインターネットに接続できる携帯デバイスが普及していることに加えて、LINEなどのコニュニケーションツールが多数出現している状況が拍車をかけているように思います。
特に所属集団でのコニュニケーションに必要という大義名分のもと使用し始めたものの、自己制御が難しい中学生のあたりで大きな問題となっていることは皆様も感じておられるところではないでしょうか。

特に注意欠陥多動性障害患児の場合、いわゆるIT中毒状態になった場合、家族を始め、ITとの関わりを切ろうとする人間すべてに攻撃的になってきますので、治療に入ることが難しいこともしばしば経験します。彼らは、社会的基盤が技術の革新に追いついていないことが生み出したひずみの犠牲者といえます。この問題は医療の枠を超えているものですから、以下は私見となりますが、革新的な技術は適材適所で使用する限りにおいては便利ですから規制すれば良いというものではないのでしょう。大人を含め、IT機器に支配されない生活スタイルの確立を社会全体で考えるべき時に来ているのだろうと思います。

B:覚醒障害

これまでは覚醒しすぎることが、主に翌日の日中の問題へとつながるものについて紹介して参りましたが、これ以降、覚醒すべき時に十分覚醒状態にならないことが問題となる睡眠障害について述べたいと思います。
覚醒障害の場合、多くが小学生のころにみられることが多く、特に宿泊訓練や修学旅行がある5~6年生の時に、本人・家族・学校共に心配になることが多いのですが、実際には治療を要することは少なく、また共通することとして疲れすぎること、発熱などが誘因となることが多いので、そのような状態にならないように工夫をすることで、学校生活や行事に制限を設ける必要はないと考えられます。

B-1:錯乱性覚醒

この状態は、睡眠からの覚醒途中あるいは覚醒後の著しい精神的混乱が主たる問題となります。動き回ることや強い恐怖反応は伴いません。なだめようとしてもさらに興奮するため、本人の混乱が静まるまで静かに経過を観察することが大切です。生じる時間帯としては最初の深睡眠相と思われる睡眠の前1/3が多いようです。ほとんどは5~15分程度で落ち着きますが、時に30~40分続く場合もあります。幼児期から学童期の有病率は17%強で、血縁者の幼少時期に似たようなエピソードが見られたことはしばしば聞き取ることが出来ます。

基本的には良性の病態で、5才以降は症状の発生頻度も減少していきます。家族や周囲の大人もそのことを念頭に置き、混乱状態でけがをしないように危険なものがないように配慮する程度で特に治療を行わず経過を見ることが多いものです。睡眠不足や、過労、アルコール摂取が引き金になることがありますので、年長になってもこのエピソードが見られる場合、それらを避けるように本人が自覚できるよう指導する必要があります。

B-2:睡眠時遊行症

睡眠時遊行症は錯乱性覚醒と異なり、突然、情動的な変化を伴わずに淡々と覚醒中に行うような普通の動作を始めてしまう状態です。ただし、その行動が合理的とは限りません。場合によっては、トイレと勘違いしてふすまを開けて用を足すような場合もあります。静かに玄関を出て周囲を徘徊するようなこともあります。
多くは、入眠後3時間以内の深睡眠相に生じます。一回のエピソードはほとんど15分程度で終了し再入眠します。翌朝起床後に、遊行時の記憶が残っている場合もあります。小学生のころに生じやすく、有病率は錯乱性覚醒と同じく17%程度ですので珍しい現象ではありません。睡眠時遊行症も血縁者の学童期に同じようなことがあったことが多く聞かれます。

しかし、小児期に特有の現象ではなく、成人になってもみられることはあります。多くは思春期に自然寛解します。睡眠不足、発熱など身体的ストレス、同様に身体的ストレスが生じる各種疾患がコントロールされていないときに生じることが報告されています。基本的には睡眠時驚愕症のような自律神経の嵐状態はありませんが、遊行時に興奮状態になる場合もまれにあり、その場合には両者の鑑別は難しくなります。

特別な治療は必要ありませんが、必要以上に疲れないような生活習慣を身につけさせることや、動き回ってもけがをしないような睡眠環境の整備が重要になります。

B-3:睡眠時驚愕症

入眠後最初の深睡眠相で生じやすく、激しい叫び声をあげたり、激しい恐怖体験をしたような心拍・呼吸・発汗・瞳孔散大・筋緊張が観察されます。恐怖の原因はないと伝えてもしっかり覚醒するまでは本人は理解せず、混乱状態が続く場合もあります。幼児期から小学生が好発年齢であり有病率は数%程度で、前述の2疾患と同じく血縁者にも幼少期に同じ経験があることを聞き取れる場合がよくあります。思春期以降、自然寛解することが多いので特別治療を必要とするわけではありません。しかし、睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群に合併しいている場合、それぞれの睡眠障害の治療をすることで睡眠時驚愕症の改善がみられることもありますので注意を要します。

これら3つの覚醒障害はてんかんの複雑部分発作との区別が難しい場合があります。状況によっては脳波検査を行い、てんかんの可能性を否定する場合もあります。学校生活の中で気になる点がありましたら、学校の方から家族に医療機関受診の必要性がないかどうかについて声掛けをしていただくことは重要になります。

B-4:レム睡眠随伴症

レム睡眠随伴症は小児期にはあまりみられません。ほとんどは、中途覚醒かノンレム睡眠の特に深睡眠相で生じる覚醒障害となります。レム睡眠随伴症は小児特有と言うより、全年齢で生じうるものです。しかし、悪夢については思春期頃から増える訴えでもあります。

B-5:レム睡眠随伴症

多くは中年・壮年期以降にみられるもので、レム睡眠時、特に悪夢に伴って攻撃的な行動をとることが多いもので、小児期にはほとんどみられません。睡眠時遊行症との鑑別は、睡眠脳波上、ノンレム睡眠時の行動か、レム睡眠時の行動かで区別をつけるしかありません。

C:その他の睡眠随伴症

C-1:悪夢

字のごとく悪夢によって熟眠感をえられなかったり、再入眠が困難となることがあります。悪夢がひどい場合にはクロナゼパムを用いることがありますが、それでも十分な改善を得られない場合もあります。悪夢が必ずしも睡眠の質の低下を来さないこともあります。
特に小学生の低学年頃までは、翌日の日中活動に影響が生じないことの方が多いのですが、思春期以降は影響が残ることが多くなるようです。本人が問題と感じないのであれば、積極的には治療をせず経過をみることもあります。

C-2:睡眠時遺尿症

5才以降、週に2回以上睡眠中に遺尿がみられるものを言います。6才で10%、10才で5%、12才で3%、18才で1~2%の有病率があると言われていますが、これほど高頻度にみられる現象であることはあまり知られていません。また、親も失敗を思わず責めてしまい、本人達も悪いことをしていると錯覚する悪循環が多くみられます。その結果、本人達は他者の前で失敗することを恐れ、宿泊を伴う行事に参加することをためらうほどです。
遺尿の原因としては、尿の濃縮力、膀胱の蓄尿量などが関連しますが、少しずつ工夫をすることで遺尿の回数を減らすことが出来ることを共通認識として持ち、実際回数が減ることで本人の自信を取り戻させることが重要です。